全国盲導犬使用者交流会(伊勢大会に参加して


 『第8回全国盲導犬使用者交流会(伊勢大会に参加して』



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2002年5月25日(土)から27日(月)



 全国の盲導犬使用者が一堂に会し、会員相互の親睦を深め情報交換するとともに、
宿泊施設や乗り物などあらゆる公共の場でのマナーの向上を図り、盲導犬の啓発の場
とすることを目的とする。
 交流会は全日本盲導犬使用者の会(清水和行会長、会員約350人)の主催で8回目。


――5月25日(土)――


  午前5時起床、よく眠れた。体調は別に悪い所はなかったので、少しほっとした。
 先日からの天気予報は、好天に恵まれるとのことで、傘の持参は不容である。これ
は、ありがたい。
 軽い朝食をとった後、リュックサックの中味を再確認した。
 少し時間的に余裕があったので、パソコンのメールチェックをした。急ぎのメール
は、特に無かった。未読メールは帰ってから読むことにしよう。

 午前7時20分頃、自宅を出発。快晴であった。
 パトリックは、これから始まる様々な出来事について、知る由も無かったであろう
が、いつものようにしっぽブンブンで、足取りは軽く、、いつの間にかJR矢野駅に
到着した。
 予定より早く着いたので、一つ早い列車に乗ることにした。
 午前8時に広島駅に着いた。新幹線ひかり114号の発車時間までには38分の余
裕があった。北口前広場でパトリックの排便を済ませた。
 みどりの窓口で一休みしようと思ったところ、助役室の車掌さんが迎えにこられた。
 そのまま車掌さんに案内をしていただき、新幹線ホームに着いた。
 新幹線の発車時刻まで20分近くあった。
 「同じ列車には、6頭の盲導犬も乗るんですよ」と説明していただいた。

 プルルルルルル・・・、しゅウウウウーーー。 ひかり114号がホームに入って
きた。
 今回は障害者用の個室が空いていなかったので、自由席の5号車に乗り込んだ。
 案内された席は、一番後ろの左側の席であった。
 車掌さんにお礼をした後、席に座りこんだ。

 発車の時間、ひかり114号は静かに動き始めた。
 この瞬間、新しい旅に思いをはせた。なんか心の中からうれしさが込み上げてきた
のを実感した。
 福山駅で一時停車し、お客さんが乗り込んできた。
 私とパトリックは、二つの座席を独占していたので、それを見たおばさんが、
「そこの席は空いていますか?」と尋ねてきた。
 私は躊躇なく、「盲導犬がいますので・・・」と言ったら、あっさりと向こうに消
えたようであった。

 今度は、岡山駅で一時停車。また、ぞろぞろとお客さんが入ってきた。
 右からおばさんの声がする・・・。
「そこの席、座ってもいいですか?」と尋ねられたので、
「済みません、盲導犬がいるのですが・・・」と言ったら、奥の方へ消えた。
 私はちょっと気になったので、頼りない残存視力で、前方を見たところ、なんと!
座席に座れず立っている数人のお客さんの姿がぼんやりと見えた。これは間違いない
と思った。
 いやいや、これは失礼なことをした。気がつかないというものは怖いもんだ。
 私は少し恥ずかしくなったので、パトリックを座席の下の奥に伏せさせて、空けて
いた窓側の席に移り、リュックサックを膝の上に置いた。

 しばらくすると、おじさんが「その席はあいとりまっかあ?」と尋ねてきた。
 私は、「はい、空いていますが、盲導犬がいるんですが、よろしかったらどうぞ!」
と言ったら、「わしは犬が好きなんで、ほんなら座らせてもらいまっせー、
ほう!これが盲導犬かいなあ、テレビで見たことはあるが、初めて見せてもらいまし
たわ!」
 「ワンちゃんの名前は? 何才かいな? 賢そうな顔しとるでえ」

 私は、最初の爽快な気分で、ゆっくりとした旅行気分を味わっていたのが、崩れ去
るのを実感していた。
(まあいっか!これも思い出の一つになるんだと、なるがままにと思った。)

 時間の経つのは早いもので、京都駅に到着した。
 新幹線から下車すると車掌さんが迎えにこられて、流れる人波の中、無意識のうち
に近鉄線の乗車口の待合室に付いた。
 ここで、盲導犬ユーザー6組と一緒になった。 午前10時50分頃だった。
 パトリックの排便に行こうと思ったのだが、ここの待合室は2階であったし、外に
出て戻ってくるまでの時間を考慮すると、このまま我慢することにした。

 しばらくすると近鉄特急の列車が入ってきた。
 妙なことにこの列車も私の座席(指定席)は、新幹線と同じ最後部席の左側だった。
 午前11時15分、静かに動き出した。走り出してから数分後、特急なのに意外に
も騒音は、あまりなかった。
 JRのローカル線のようなガー、ガーという雑音が無かったので、少しの時間、自
然に眠りに付いた。パトリックも静かにおねんねしているようだ。

 2時間の乗車は、長いように思えたが、集合場所の宇治山田駅に到着した時は、案
外早く付いたなあと感じた。
 大勢のざわざわとした声がする。
 列車から降りると、駅の出口付近で、受付をしていた。
 全犬使会の会長、清水さんの声が聞こえる。
 受付を終えると、地元のボランティアさんから名札を付けてもらった後、駅前の駐
車場付近でパトリックの排便を済ませた。

 午後2時、盲導犬53頭、、ユーザー58名、ボランティアさん、総勢、約120
名が一堂に会した。
 清水会長の挨拶と、地元新聞記者の挨拶の後、三台の観光バスに分乗した。

 午後2時半頃、伊勢神宮に到着。
 駐車場でパトリックの排便をさせたが、小だけだった。いつもなら大もするのだが、、
 私はパトリックの体調異常を心配していた。

 ここから、ボランティアさんの案内で、じゃり道を歩いた。パトリックは、前後左
右のワンちゃんが気になるらしい。
 少々興奮気味で力強く私を引っ張った。
 排便をしたいのだろう、適当な場所を付き添いのボランティアさんに聞いたが、こ
こはずっと、じゃり道が続くらしい。
 またパトリックの引きが強くなったので、やむを得ず排便をさせた。やはり大が出
た。

(伊勢神宮内宮)参拝、その後「おかげ横丁」を散策した。
 気温は夏の陽気のため、のどがカラカラになった。
 おかげ横丁の出店がたくさんあり、イカ焼きの臭いもしてくる。
 この辺で一休みすることにして、のどを潤すことにした。ボランティアさんが
「あかふくのカキ氷は、おいしいですよ!」ということで、屋台の座席に一緒に座っ
て、これをいただいた。
 これは本当にうまかった! 暑さでカラカラのど状態が、オアシスに辿り着いたか
のように生き返った気がした。
 パトリックものどが渇いていたのだろう。途中、水のみ場所があり、バシャバシャ
と水を飲んでいた。

 バスに戻る途中、ハプニングがおきた。
 私の左は、パトリック。右は、ぼらんてぃあさん。「あーん!あーん!」
 左側から子供の泣き声がする。
 どうしたんだろうと、ボランティアさんに聞いたら、子供さんの右手のお菓子のよ
うなものをパクリと食べたようとのこと。
 パトリックは、もぐもぐと食べていた。これが本当のパクリックか!?

 私はパトリックを強く叱りつけた後、同伴のご両親に何度も「済みません!」と謝っ
て、「弁償をしますので」と言ったら、「ああ、いいですよ、ほんとに」と言われた。
パクリックは何事もなかったように私を引っ張った?
 子供さんはずっと泣いていた。(いやいや、本当にごめんなさいね)
 ボランティアさんに聞くと、子供の背丈はパトリックの鼻の位置よりも少し高い位
だったそうである。
 私もぼんやりとではあるが、子供さんを見た。男の子のようだった。
 違うかな? ごめんね!?

 観光バスに戻って、約30分で志摩セントラルホテルソシアに着いた。
 バスから降りると以外にも、ここは6階であった。ホテルマンが迎えに来られて、
「排便を済ませたいのですが」と言うと、エレベータまで案内していただき、1階に
着くと、少し歩いて出口にでた。ここはコンクリートにじゃりがあるところで、パト
リックは、我慢していたのか、すぐに小を済ませた。
 この後、宿泊部屋を案内され、一つ一つ丁寧に説明を受けた。
 パトリックにフードを与えて一息ついた。
 午後6時半から懇親会があり、午後9時頃まで、食事と歓談を楽しんだ。


――5月26日(日)――


 午前5時半、目が醒めた。
 今日も体調はまあまあであった。特に疲れはなかった。
 朝食もおいしくいただくことができて、楽しい二日目の始まりである。

 午前9時、ホテル発。
 1号車の観光バスに乗車した。バスは、3台である。
 パトリックは、バスに乗って、30分以上経つと、鼻でクーン、クーンと鳴くくせ
があり、心配していたのだが、昨日、今日と鳴くことはなかった。
 9時40分頃、海の博物館に到着した。ボランティアさんが一つ一つ丁寧に説明し
ていただいた。釣具・たこ壷等、いろいろ手で触った。

11時10分頃、次の観光地二見シーパラダイスに到着。
 鳥羽水族館へ行く前にパトリックを2号車のユーザーさんに一時預けた。
 ボランティアさんの案内で、水族館を見学した後、あざらしに触らせてもらった。
 なんか大きいゴムのかたまりのようだった。大きさは2、3メートル位はあったよ
うだ。見学の後、観光バスの駐車場に戻ったところ、パトリックが鼻でクーン、クー
ンと鳴いていたと思ったら、思いっきり私へ飛び込んできた。

 預けていた人の話によると、主人がいなくなったので、寂しそうに鳴いていたとの
ことであった。
 少しバタバタしていたので、ここで服従訓練をしたら落ち着いたようだった。

 昼食の後、パトリックの排便をさせたが、ゲー、ゲーと唾液のようなものを戻して
いたようである。何か体調がおかしいと、前から感じていた。

 話は遡りますが、この交流会に参加する1週間前にパトリックのフードが無くなっ
たので、いつものフードを注文したところ、在庫切れとのことだった。他のフードに
変更するつもりはなかったので、入荷したら至急、送ってくださいと頼んだ。
 フードが無くなったので、仕方なく動物病院のフードを2kg買って、それを与えて
いたが、やはり、フードが変わったら排便タイムと1回の排便量が違ってくる。
 交流会に参加する直前だったので、パトリックの体調を心配していたのだ。
 幸いにも参加の前の日、注文していたフードが届いたので、四食分をリュックサッ
クに詰め込んで一安心と思っていた。
 と言うことで、パトリックの体調の異常がここに来て出たのかもしれない。

 この後、伊勢戦国時代村を見学し、お土産を買った。
 午後5時すぎに鳥羽国際ホテル着
 6時半から懇親会が始まった。

 以下、地元の新聞掲載からの一部引用です。

 「こちらはカツオのたたきです。前菜の真上に置きました」。2日目の宿泊先、鳥
羽国際ホテル。懇親会場の夕食で従業員は料理を出す際、一品ずつ料理名と、器を置
いた位置を説明した。 同ホテルはこれまで個人的な宿泊で2回、盲導犬使用者を受
け入れただけだ。「誘導する際は腕や肩をもってもらう」「客室で電話、ベッド、机
など設備の位置を説明」−。今回は「対応マニュアル」をもとに、1週間ほど前から
ミーティングを繰り返した。部屋の戸に点字のルームナンバーを張り、リンスと区別
出来るようシャンプーボトルに輪ゴムも付けた。 当初は不安もあったが、盲導犬使
用者側も外出慣れしていて、スムーズに。従業員も料理の器に盲導犬使用者の手を触
れさせるといった動作が自然に出来たという。

鳥羽国際ホテルでの夕食。盲導犬はおとなしく待っていた。
 食事中、盲導犬はテーブルやいすの下でじっと寝そべっていた。マナーのよさに従
業員の方が驚いていた。同ホテルの高橋良樹社長は「接しているうちにすぐ慣れ、実
践が一番と感じた。環境、福祉問題への対応はホテルも避けて通れず、いい勉強になっ
た」。

以上、引用終了

 上記引用文の中で、盲導犬のマナーの良さについての記述があったが、パトリック
は落ち着きが無く、何回か頭を上げて鼻をクンクンさせていた。
 こういう場所での服従訓練は、今後の課題として残った。私の指導の甘さもあるも
のと痛感した。

 午後9時頃、親睦会終了。寝床に付いたのは、11時前だった。
 私は、パトリックのゲー、ゲー、ゲーという声に目が醒めた。午前0時半頃であっ
た。
ベッドの下にバスタオルを敷いて、そこにパトリックを寝かせていたのだ。
 何か腹の中の物を戻したようであった。近づいてみると、ペチャペチャと、バスタ
オルをなめていた。どうやら床はよごれていないようであった。

 ここは3人部屋で、どなたかの「いびき」がする。恐れ多くも誰とは書きませんが・・・。
 再び眠りに付こうとしたが眠れない。「いびき」の不協和音が気になってしまう。
 私も風邪を引いた時には「いびき」をかくので、ひと事とは言えない。
 音声時計を聞くと午前1時。
 「グー、グー!」 「ゴー、ゴー!」
  ZZZZZZZZZ・・・・・・・・・・。

 まだ眠れない。午前2時、3時半がすぎた。
 私は頭の中で、パトが1匹、2匹、3匹、・・・100匹と数えていた。

 いつのまにか眠りについて、目が醒めた。午前5時10分だった。
 「今日は大丈夫かな?」と少し心配であった。


――5月27日(月)――


 午前6時半頃、私の朝食の前にパトリックの排便を済ませた。
 体調を心配していたのだが、パトリックは元気よく歩いていたので、まずまずのよ
うに感じた。
 昨晩の宴会場と同じところで、朝食をいただいた。
 朝食後、清水会長から、本交流会についての成果を熱っぽく語られた。
 なかなかの話上手である。全員が拍手を送り、交流会参加の喜びを分かち合った。

 午前10時頃、ホテルを後にして、15分くらい歩いた。
 パトリックは、元気よく私を引っ張って、ショッピングビルへ行く集団の先頭に立っ
た。
 鳥羽駅前のショッピングビル「鳥羽一番街」で、ボランティアさんの案内により買い
物した。

 以下、地元の新聞掲載からの一部引用です。
 なお、氏名等は一部、匿名にしました。

  一行は27日午前10時から1時間半ほど鳥羽駅前のショッピングビル「鳥羽一
番街」で買い物した。一番街も事前に聞いた、「品物に触らせてほしい」「犬にむや
みに触らない」などの留意点を各店に連絡して備えた。 「盲導犬は十分訓練されて
おり、ほえたりかみついたりしません」と、説明の放送も繰り返した。「地域全体で
(バリアフリー観光を)盛り上げ、新たなお客さんに来てもらいたい」とテナントで
作る協同組合の専務理事のKさん。 「鳥羽ガイドボランティアの会」から4人、音
訳ボランティアグループ「つのぶえ」から3人など、市内のボランティア関係者らも
駆けつけ、おみやげを選ぶ際、商品の特徴や値段などを説明。ボランティアの会の
会長Hさんは「今後、障害者の方へのガイドも対応できるよう検討したい」。
 買い物後、埼玉県行田市から来た使用者の会の同県職員Tさん(54)は「ホテル
の食事もおいしく、みやげもの店では商品を手にとらせて説明してくれた」と満足げ。
「友達とまた来たい。団体でなく、1、2頭で来た場合も同じ対応を」と語った。

引用終了

 午前11時半、近鉄鳥羽駅で解散した。
 付き添いのボランティアさんは、11時56分初の特急列車が入ってくるまで、案
内してくださった。
 いつもながら、ボランティアさんの心温まる活動には敬意を表したい。
 この感謝の気持ちが、無事に良い旅ができ、うれしい思い出づくりができたことの
喜びとなるのである。

 午後2時20分頃、近鉄特急の列車が京都駅に着いた。
 ここから車掌さんが迎えにきてくれる手配となっているのだが、誰も私を迎えて案
内してくださる人には会わなかった。

 人の流れのまま歩いていると、横から若い女性の声があった。
 「どちらまで行かれますか?」「広島方面でしたら右側のエスカレーターからです。」

 私はちょっと迷っていたので、本当に助かった。
 新幹線乗り場に付き、博多方面のホームで、次に入ってくる新幹線を待った。
 自由席の1号車の方向を近くの人に尋ね確認した。

 新幹線が入ってきて乗り込んだ。今日は平日のため、車内はすいていたようで
ある。
 座席にすわって、交流会を振り返り、物思いにふけていた。

 約2時間半後、パトリックと元気にJR矢野駅に着いた。
 なんか1ヶ月振りに帰ったように懐かしい気持ちであった。

 今回の交流会に参加して、本当に良かったと思う。
 しかし、パトリックのいくつかのweak point(欠点・弱点)は、課題
として残った。
 この経験を踏まえ、更なる信頼関係を構築できるように努力を重ねたい。
 こうして新たな思い出作りの1ページがまた追加された。



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