盲導犬(ガイドドッグ)の呼び方



 
【盲導犬(ガイドドッグ)の呼び方について】



 パトリックと散歩をしていると、嬉しいことがよくあります。
 道で人と出会ったら「おはよう! こんにちは!」と挨拶してくれます。
 挨拶のほかは、だいたいパトリックにかけられる言葉です。
 ここは広島なので、広島弁にします 。
 「偉いのー! がんばっちょるのー!」と声をかけてくれます。

 人から声をかけられることが 自分の事のようにうれしい 気分になります。
 小学生が近寄ってきて、「かわいい! さわってもいい? 名前は何ていうの?」
と お決まりのことを聞いてきます。
 たまに「背中に何を着けているの?」、 「これはハーネスだよ・・・」

 遠くから、「あ! 盲導犬だ!」という言葉が聞こえます。
 子供連れの親が、こちらに近づいてきて「今、お仕事中だから、触っちゃダメだよ」

 盲導犬の認識は、私がこれまで、出歩いた中で、知らない人の方が少ないのでは?
 と思っています。

 ある日、ドキッ! とする言葉を耳にしました。
 「おじちゃん、目が見えないの? めくら?」と聞いてきました。
 子供だから素朴な疑問だろうと思いました。
 私はその時、いや、「目が不自由なんだよ」と言いました。

 共同合宿から卒業して、間も無い頃、こんなことをある人から聞かれたのを思い出
しました。
 「盲導犬は、弱視の方でも与えてくれるんですか? 全盲の方だけかと思いました。」
 この言葉を聞いた時、そういえば盲導犬を直訳すると、盲(めくら)を誘導、案内
してくれる犬となります。
 私は、弱視のため、普通に動作している場合、全く面識の無い他人から目が悪いと
は、見られませんが、盲導犬と一緒に歩行することによってユーザーは目が見えない
と思われることでしょう。

 盲導犬という言葉の響きが、この頃気に障るようになってきました。
 何故、日本語は、盲(めくら)を導く犬なんでしょうか?
 盲(めくら)は、差別用語です。

 もしも私が視覚障害となっていなかったら、目の不自由な方や其の他の障害を抱え
ておられる方の立場や差別用語について、真剣に考えたでしょうか?
 広島市役所に勤めていた関係、少なくとも障害者については、職場の研修とか窓口
や電話の接遇・応対により、障害に対する悩みを知っているつもりでした。
 結局は、上辺(うわべ)だけでしか理解していなかったのです。
 人は、その立場になって、初めて気がつき、悩み、挫折するのだと思います。

 しかし、この挫折を乗り越えていく試練を与えられていることを喜びに感じれば、
道は必ずひらけてくるものと思います。
 目の障害を精神的な不安から克服したい。
 今後の生活を前向なものとして、目覚めさせてくれたのは、盲導犬(guide dog又は、
seeing eye dog)を持ちたいと思ってからのことです。

 もともと盲導犬は、欧米諸国から日本に紹介されました。盲導犬への命令のほとん
どは、英語です。
 盲導犬への命令は英語で何故するのかと言うとパピーウォーカーさんの育成の段階
から、適当な言葉で命令をすると今度盲導犬になった時に犬が戸惑って混乱してしま
うからだそうです。私があえて言うまでもありませんが、例として、命令の「カム」
は、男言葉なら「こい」、女言葉なら「おいで」となります。
 それから、命令の「シット」は、男言葉なら「すわれ」、女言葉なら「おすわり」
などとなります。
 そして、色んな方言をもちいて話せばなおさらの事です。だから、英語で統一され
ているそうです。

 盲導犬のことを英語では、Guide Dog(ガイドドッグ)です。直訳すると案内する犬
です。
 どうしてガイドドッグと呼ばずに日本語で、盲導犬と呼ぶようになったのでしょう
か?
 過去のいきさつはどうであれ、このようなことを考えているのは私だけでしょうか?

 以上のことを踏まえまして、もしも「その犬は、盲導犬ですか?」と聞かれたら・・・
 「いえいえ、Guide Dogですよ、」と答えるつもりです。

 まだ一回もこのようには答えていませんが、今後、もし聞かれた場合、地道な呼び
かけをしようかなと思っています。


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